ゆずぽんず簿記

税理士試験の簿記論を中心に勉強の備忘録や(できたら)過去問の解説等を行っていきます

#3 資産除去債務

資産除去債務とは、「有形固定資産の取得、建設、開発又は通常の使用によって生じ、その有形固定資産の除去に関して法令又は契約で要求される法律上の義務及びそれに準ずるもの」と定義されています。

 

例えば飲食店を開く際に、「店舗の契約終了後は調理設備等を除去して、まっさらな状態で返して」という契約の場合の除去費用を契約時点でどう認識して、どう会計に反映させるか、というのが資産除去債務会計です。

 

資産除去債務の会計処理

 

資産と負債の両建て処理をします。

発生時には

除去費用を現在価値に割引き、負債計上

そして同額を固定資産の取得価額に追加して資産計上

します。

 

その後、決算時には

資産に計上した分に関しては、減価償却を通して費用配分

負債に計上した除去債務は、毎期割引率をかけて算定し、除去債務履行時に消去します

 

具体例がないとなかなかわかりづらいので例題で説明します。

 

例題

「当社は、×1年4月1日(期首)に機械装置を現金購入し、直ちに使用を開始した。

取得原価:100,000千円 耐用年数:2年 定額法による償却(残存価額は0)

この機械には使用後に除去する法的義務がある。

除去する支出額は当初3,000千円と見積もられる。その際の割引率は2%である。

(千円未満はその都度四捨五入する)

後、この機械装置はX3年4月1日に除去し、除去費用として3,300千円現金支出した。」

 

①購入時の仕訳(単位は千円)

(機械装置) 102,884    / (現金)             100,000

                                         (資産除去債務)    2,884 

 

※除去債務の計上額は

除去に要する支出額/(1+割引率)ⁿ=3,000/(1.02)²=2,884(四捨五入後)

機械装置の計上額は、機械そのものの取得原価100,000に

資産除去債務である2,884を追加した102,884となります。

 

②決算時の会計処理(×2年3月31日)

Ⅰ時の経過による資産除去債務の調整

(利息費用)   58    / (資産除去債務)  58

 

※利息費用は

資産除去債務のBS価額×割引率=2,884×2%=58(四捨五入後)

となり、同額を資産除去債務に追加します。

(①の資産除去債務を求めるように計算して利息費用を逆算することも可能ですが、

 四捨五入の関係でズレる可能性があるので注意が必要です。)

 

減価償却(間接控除法)

(減価償却費)  51,442 / (減価償却累計額)  51,442

 

※資産計上した除去費用は、減価償却を通して費用配分されます。

 

③履行時の会計処理(×3年4月1日)

(減価償却累計額)  102,884  / (機械装置)  102,884

(資産除去債務)    3,000     (現金)     3,300

(履行差額)         300

 

※資産除去債務と実際の支払額に差異が生じた場合には

履行差額として処理を行います。

また上記仕訳には記載していない最終年度×3年3月31日の利息費用の計算ですが、

その時点の見積もり除去費用である3,000千円との差額で調整します。

 

割引前将来キャッシュ・フローの見積りの変更

 

もし除去費用の見積りが変更された場合、

資産除去債務の帳簿価額と

それにかかわる固定資産の帳簿価額の

両方を加減して処理を行います。

 

その際、キャッシュ・フロー増加するのか減少するのか

計算する割引率が変更します。

 

割引前将来CFが増加する場合

この場合、新たな資産除去債務の発生を認識し、

見積り変更時点での割引率を採用します。

 

先ほどの例題の×2年3月31日時点において

除去費用見積額が3,300千円、割引率が2.5%になったと仮定すると

 

上記Ⅰ、Ⅱの仕訳は同様ですが、それに加えて

Ⅲ将来CF見積額増加による資産除去債務の調整

(機械装置)  293  / (資産除去債務)       293

※(3,300-3,000)/(1+0.025)¹=293(四捨五入後)

 

の仕訳が必要となります。

 

×3年3月31日の最終年度の仕訳は

Ⅰ時の経過による資産除去債務の債務の調整

(利息費用)  65  / (資産除去債務) 65

※割引前将来CFと期首資産除去債務BS価額との調整

{3,000-(2884+58)}+(300-293)=65 

 

減価償却

(減価償却費) 51,735   / (減価償却累計額) 51,735

※102,884/2年+293/1年=51,735

新たに資産計上した除去費用は残存耐用年数である1年で

減価償却を行います。

 

割引前将来CFが減少する場合

 

資産除去債務の調整を当初資産除去債務を計上した時点での割引率

を用いて、負債額を減少させ、

同額を資産からも減少させます。

 

上記の例において

2.5%を用いるのではなく、当初の2%の割引率を採用し、

(減少した割引前将来CF) / (1+0.02)ⁿと計算して

資産除去債務を再度求め、当初計上額との差額を減少させます。

 

また機械装置も資産除去債務減少分を同様に減少させます。